通訳案内士の資格は、訪日客相手の外国語ガイドになるためのパスポート

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「通訳案内士の資格を取得したい」 「資格を取得したらどんなメリットがあるの?」と思っていませんか?

実は、通訳案内士の資格は、外国語でのガイドを仕事として行うためのもので、語学の実力を証明することにはあまり役立ちません。

なぜなら、就職や転職で語学能力をアピールするには、語学に特化した別の資格を示したほうが良いからです。

この記事では、通訳案内士の資格が役立つ場合と、あまり役立たない場合についてご説明します。

読み終えていただければ、通訳案内士資格の取得を目指すのが良いか、またはそれ以外の方向に進むのが良いか、判断の指針を得ることができます

通訳案内士の資格は、仕事としてガイドをするためのもの

「通訳案内士」という名前を聞いて、どんなイメージを持ちますか?語学が得意な人が目指す、「通訳」の資格なのだと思うかもしれませんね。私も「通訳案内士の資格を持っています」と言うと、「すごいねー」「通訳ができるのねー」という反応が返ってくることがあります。

でも正直にいうと、通訳など全くできません。そんな語学力は持っていないと自分でわかっています。通訳案内士の正しい意味は、「外国語を使ってガイドをする人」です。もちろんある程度の外国語能力は必要ですが、日常会話+アルファのレベルで十分といえます。

通訳案内士の試験科目を見ると、日本地理や日本史、通訳案内の実務といった、ガイドで必要となる内容を日本語で出題しています。むしろこちらの方が、試験の本筋といった感じです。

通訳案内士試験では、英検やTOEICで一定の成績があれば、語学科目が免除になります。これは、「英検やTOEICで良い点をとっていれば、あなたは英語力が十分あると信用します。ですから、もう英語の試験は受けなくていいですよ。」ということです。通訳案内士が語学の資格ではないからでしょうね。

つまり、通訳案内士とは、ガイド業務を仕事として行うための資格なのです。

5年ほど前までは、通訳案内士の資格を持たずに外国人旅行者にガイドを行い報酬を得ることは、違法行為でした。2018年の法改正以降、そのルールは無くなりました。それでも、外国語でガイドをするには、いまでも必須の資格と言ってよいでしょう。

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就職や転職で語学能力をアピールするには、別の資格が有利

観光庁が平成25(2013)年に実施した通訳案内士就業実態調査を見てみましょう。回答した通訳案内士有資格者のうち、62.7%(複数回答)が取得動機を「語学力を証明するため」と回答し、第一位の理由となっています。

ですが、ここには大きな誤解があります。

もしあなたが、語学能力をアピールするために通訳案内士の資格取得を考えているのなら、それはやめた方が良いです。一般企業の就職や転職では、通訳案内士の資格はまったく評価されません。

一般の企業で評価される資格は、例えば英語なら

  • TOEIC
  • 英検
  • IELTS

でしょうか。私がかつて勤務していた会社でも、語学評価の基準はTOEICの点数でした。他の言語なら、フランス語検定とか、中国語検定といった検定試験になるでしょう。通訳案内士資格がプラスに働く可能性があるのは、旅行業や観光業といった業界だけです。

語学力をアピールするのであれば、通訳案内士資格取得のため多くの科目に時間を費やすのは無駄です。それより、TOEICで1点でも高い点をとること、英検で上位の級に合格することに努力したほうが、はるかに効果的でしょう。

通訳案内士資格のことを、「唯一の語学系国家資格」と言う人もいますが、とても誤解をまねきやすい言い方と思います。語学系というよりも、正しくは職業系(旅行系・観光系)の資格でしょう。

通訳案内士の資格が役立つ場合とは?

それでは、通訳案内士の資格はどんな場合に役立つのでしょうか

まず、旅行会社に対して、外国語で案内や接遇ができることを示すことができます。私の体験でも、旅行会社のガイド募集時には、通訳案内士資格を有することが条件となっていることが多いです。

ほかにも、観光業だけでなく、ホスピタリティ産業(健康、教育)では、外国人を相手にする機会も増えています。そのため、この資格を評価してもらえる可能性があります。

もちろん、フリーランスでガイドになろうと考えている方は、この資格は絶対に持っていた方が良いです。ガイド業界では、黄門さまの印籠みたいなものですね。

通訳案内士の資格は、あくまで特定の産業、分野についてのみ、有効な資格と言えそうです。

通訳案内士の仕事に興味を持ったら、資格取得を目指そう。

コロナ後は、全国でインバウンド客が急増しており、通訳案内士は慢性的に不足の状態が続いています。ガイドを始めるのに、今ほど有利なタイミングはありません。

日本は観光立国を目指していますし、魅力的な観光地として海外からの評価も高いです。これからますますガイドの需要は増えていくと考えられます。

もしあなたが、語学が得意だとか、語学の勉強が好きと感じているなら、通訳案内士の仕事について調べてみてください。また、人のお手伝いをすることが好きとか、国際コミュニケーションに関心があるという方も向いています。

まず自分の目指す将来を考えて、通訳案内士の資格が有利になるかどうかを判断しましょう。ガイド業や旅行業・観光業に興味が無い場合には、この資格はあまり役立ちません。無駄な努力は避けたほうが良いでしょう。

まとめ

それでは、この記事のポイントをまとめていきます。

  • 通訳案内士の資格は、ガイドを仕事として行うためのもの
  • 就職や転職では、TOEICや英検などが有利
  • 通訳案内士の資格が役立つのはガイド、旅行会社、観光業など
  • 自分の進路を考えて、資格取得をめざすか判断しよう

この資格に興味を持った人は、まずガイドの仕事内容について詳しく調べてみましょう。もし、「自分に合いそうだ」とか「やってみたい」と感じるようであれば、資格取得にトライしてみても良いでしょう。

「仕事内容にはあまり興味が持てないけれども、語学の力を試してみたい」という方は、英検やTOEICのような、語学専門の試験を受験されるほうが、将来の役にたつと思います。自分の進む方向性をみきわめて、正しい努力をすることが大切です。

このブログでは、今後資格取得のための勉強方法や、具体的な仕事内容、ガイドになってからのスキルアップや、業務拡大といった内容を発信していく予定です。ぜひ参考にされてください。