通訳案内士の将来像を、ポジティブに考えてみたら

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通訳案内士の将来は、明るいのか、暗いのか、みなさんはどちらだと思いますか?

じつは、我々通訳案内士自身の努力によって、案外明るい未来にできるのではないかと、私はひそかに(ポジティブに)考えています。

なぜなら、現在すでに、通訳案内士をとりまく環境には、多くの明るい材料が見られるからです。

ここでは、明るい将来につながるポジティブな要因と、それを現実するために必要な条件についてみていきます。

読み終えていただければ、明るい通訳案内士のイメージが明確に見えてくるでしょう。

いろいろとあるポジティブな外部環境

今回まで10回にわたって、通訳案内士の資格の概要から、資格取得のための勉強法、資格取得後のお客さんの獲得方法、そしてその後の業務拡大の可能性まで、さまざまな視点から通訳案内士について見てきました。

それでは最後に、通訳案内士の将来について妄想してみたいと思います。果たして、通訳案内士の将来は明るいでしょうか?それとも暗い?

資格の業務独占が廃止されたとか、資格の受験者数が年々減少しているとか、コロナで多くのガイドが転職してしまったとか、残念なニュースは確かにありました。けれども、コロナ明けの今、状況は変化しています

たとえば、コロナでほぼ全滅状態であった訪日客数は、2023年はコロナ前(2019年)のおよそ80%にまで回復してきました。米国、カナダ、豪州などは、2023年12月の来訪者数は過去最高にまでなっています

そのせいか、2023年の通訳ガイド試験受験者は、前年を166名、約4.7%上回りました。通訳案内士法の改定以来、初の増加です。ニュース等でこれだけインバウンドが騒がれていますから、当然なのかもしれません。

そしてこれはコロナ前からの傾向ですが、団体客よりも個人客の割合が増えています。また、ホテルや航空券の手配をインターネットで、自分自身で完結する人の比率が高まっているのです。これはガイドにとっては需要が増える変化ですし、見過ごせない変化といえるでしょう。

日の出 海 女性 明るい未来

これからの通訳案内士に求められること

つまり、需要は確実に増加しています。あとは、この拡大する需要を、どうやって通訳案内士の仕事につなげていくかが、重要になっていくでしょう。

先ほどみた通り、増えていくのは個人旅行のお客さんです。家族旅行、パートナーとの旅行、リタイア後の夫婦水入らずの旅行など、その構成や旅行の目的は様々です。こうしたお客さんに対応できることが必要でしょう。

お客さん側が多様なのですから、ガイド側も多様であった方が良いと思います。皆が同じような観光地を提案するのではなく、あるガイドは自然豊かなハイキングの案内をメインにする、またあるガイドは日本のアニメに精通しておりあらゆるアニメの聖地を案内できる、というように。

以前であれば、こうした狭い分野の設定では、あまりお客さんがいないという難しさがありました。しかし現在は、SNS等の影響でしょう、ニッチで専門的な分野に対する需要が大きく膨らんでいます。むしろ平凡な観光案内には興味が無い、といったお客さんも増えています。

ですから、通訳案内士側も、自分の得意分野や好きなことを全面的にアピールし、個性を打ち出したほうが、選ばれやすくなります。他のガイドとの差別化もできるからです。こうした戦略に最も適しているのが、ウェブサイトやブログ、YouTube動画といった、インターネットでの情報発信です。もしかしたら、ネット上で「バズる」ことで、人気が殺到するということだってあるかもしれません。

これからの通訳案内士は、自分の得意分野を持ち、それをインターネットで海外のお客さんに向けて発信していく、というスタイルに変化していくと思います。そしてそのような独立したガイドが全国各地で活動し、ネットワークでつながって情報交換をしたり、お互いにお客さんを紹介し合うといった姿になっていくことでしょう。

人々 多様性 男 女 大人 子供

明るい将来をイメージしてみた

すこし明るいイメージが見えてきたでしょうか?ここからは、私が妄想する将来の通訳案内士の姿について、SF風に描いてみようと思います。

❝9月のある朝、今日はオフだったので少し遅めに起きると、PCにメッセージが2つ入っていた。どちらも私のウェブサイトを見た、新規のお客さんからの引き合いだった。一つは、米国の4人家族の父親からのメッセージで、来年3月に家族で初めて日本訪問をするので、2日間ガイドをしてくれないか、というもの。もう一つは、オーストラリア人のカッブルが、年末に北海道にスキーに行くが、その前に東京で数日滞在するので案内して欲しいというものだ。自然志向のお客さんで、箱根でハイキングをしたいらしい。

早速スケジュールを確認してみる。3月は既にかなり予約が入っているからダメかもしれないな…と思ったら、幸運なことに3月前半はまだ予定が空いていた。すぐに提案書を送ると、内容には大変満足してくれたようだ。しかも、東京の後、金沢と京都に行くので、知っているガイドがいたら紹介して欲しいと言ってきた。金沢と京都には自分と同じように、フリーランスで主に個人相手のガイドをしている人と連携しているから、都合を聞いてみよう…

もう一方のお客さんは、予定は空いているんだけれど、その日に仕事をすると6日連続の仕事となってしまう。ワークライフバランスを考えて、連続の仕事は最大5日までと、自分のルールを決めているので、これは受けられない。でもお断りするのは気の毒だから、知人でアウトドアガイドを専門にしているガイドさんに紹介してみるか…

こうして、米国の家族連れは自分のほか、金沢と京都のガイドさんにも仕事を提供することができた。オーストラリアのカップルは、自分は休日なのでお相手できないが、アウトドアに強いガイドさんを紹介できたから、きっと喜んでもらえるだろう。少額とはいえ、紹介料も入ってくる。それにしても、旅行会社に頼らず自分で集客していると、本当にフリーランスの自由を満喫できる。それじゃ、ひと仕事したから、今日は上野の美術館の国宝展に行って、それから公園内のカフェで読書でもするか…❞

いった具合。実は、これはほとんど、現在の私の仕事に、若干の脚色を加えただけです。これが皆さんにとって良い仕事かどうかはわかりませんが、私にとっては、自由で喜びのある仕事になっています。

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まとめ

それでは今回の記事をまとめます。

  • 現在、インバウンドが復活し、通訳ガイドにとって追い風が吹いている
  • これからは多様なガイドが、それぞれの得意分野で活躍するだろう
  • 未来の通訳案内士の仕事は、自由で、喜びに満ちている

というものです。

どんな仕事でもそうですが、これからは個人と個人が直接結びつく時代です。製造業もそう、サービス業もそう、メディアもそうなってきています。旅行業や観光業には、相変わらず昭和の雰囲気が残っていますが、間違いなく同じ方向に動いていくでしょう。今がチャンスです。現実社会では、ここまで物事を考えて実行に移せる人は、なかなかいません。ですから、最初にアクションをした人が、業界のリーダーになるかもしれません。それは、他でもない、あなたかもしれないのです。

1人でも多くの通訳ガイドの人が、仕事で充実感を感じ、豊かな人生を送られることを願っています。頑張ってください。

以下の私のnoteで、フリーランス通訳案内士のネットの活用法、自由な働きかたに関する思いなどを、語っています。もしよければ、覗いてみてください。