フリーランス通訳案内士が、起業・業務拡大するには

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通訳案内士はフリーランス(個人事業主)として仕事をしている場合が多いですが、起業して会社化することはできるのでしょうか?

じつは、他の人を雇用したり、法人と大きな取引をしたりという場合は、法人化したほうがスムーズです。通訳案内士からの起業であれば、旅行会社を設立することが、まず考えられます

なぜなら、通訳案内士と旅行会社とは、業務内容に強いシナジーがあるからです。旅行会社設立の要件である旅行業務管理者資格も、案内士であれば取得が比較的楽です。

ここでは、通訳案内士が旅行会社を設立する場合に考えるべきことをお伝えします。読み終えて頂ければ、通訳案内士の次のステップとしての、起業の道筋が見えてきます。

フリーランスを卒業して、起業してみよう

多くの場合、通訳案内士はフリーランス(個人事業主)として仕事をしています。私も最初、そうでした。個人事業主は、開業届さえ提出すれば、法人を設立せずに事業を営むことができますから、簡単ですよね。

旅行会社が企画したツアーのガイドをしたり、自分で集客したお客さんを案内するだけであれば、フリーランスの通訳案内士の立場で何の問題もありません。

ただ、ガイド業からもっといろいろなビジネスを展開したい、業容を拡大したいと考えるなら、法人化をするのが適当です。個人では信用が得られにくいことや、仕事のリスクを個人が背負うことになるためです。

私の場合は、自主企画のツアーをウェブで集客する事業を始めるときに、起業して旅行会社を設立しました。やはり他のガイドの方々に案件を紹介する以上、個人よりも会社のほうが、業務を受けるガイドの皆さんも安心だろうと思ったからです。

このステップは、通訳案内士の起業としては、いちばん自然な道筋だと思いますので、皆さんの参考にして頂ければと思います。

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旅行会社設立が現実的な理由。シナジーだけではない

交通の手配が自由にできるようになる

旅行会社のツアーを募集し、通訳案内士がそのガイドをする場合は、交通手段は旅行会社が手配するので、問題はありません。しかし、一歩進んで案内士が自分でツアーを作ってお客さんから直接受注をすることになると、いろいろと問題が出てきます。

例えば、ツアーで利用するタクシーの手配を通訳案内士が行うことは可能でしょうか?「え?何か問題ある?」と思った人は、気を付けてください。旅行業法では、お客さんのための運送手配は、旅行業者しかできないことになっています。

現在の旅行業法自体が時代遅れなのだ、という議論は一旦横に置きます。現行の法律では、タクシーや鉄道の予約を行うには、旅行業の登録が必要になります。お客さんの新幹線の予約を、案内士がやってはいかん、ということです。

そうなると、ガイドが自分で作ったツアーのお客さんを自分で募集するというのは、可能なのでしょうか?厳密に解釈すると、全行程が徒歩であれば問題ありません。一方、途中で電車や地下鉄に乗るというのは微妙です。運送手配を含んでいると、それは法律上「旅行」に該当し、旅行会社でないと販売できないという解釈が成り立つからです。

ここで法律の詳細を議論をするつもりはありません。ただ、通訳案内士が自分でツアーを企画して、直接お客さんから受注しようとした場合、つまらない議論に巻き込まれることを防ぐ意味でも、旅行業登録をしておいたほうが安全です。

ホテル予約や列車の予約が可能となれば、それ自体を新たな収入源とすることもできるでしょう。業務上のシナジーは確実にあります。

ガイドだけではない、新規ビジネスの可能性が増える

旅行会社を設立してウェブサイトを公開するようになると、いままで個人事業のガイドとして仕事をしていたときとは、明らかに変わることがあります。それは、様々な問合せが増えるということです。特に、海外からのものが増えます。

一番多いのが、海外の旅行会社からの問合せです。現在は日本への観光客が増えてガイドが不足しているので、彼らのお客さんが訪日したときに、そのガイドをしてくれという依頼が多いです。これらは、日程や条件をみて、受けられるものは受ければよいし、そうでないものはお断りすれば良いでしょう。以前、ある海外の旅行会社から、その会社のジャケットを着て案内をするという条件での依頼がありましたが、お断りしました。

また、日本でランドオペレーターのような業務をしてくれという依頼も多いです。これについては、けっこうな業務量になります(そのぶん利益もある)ので、新たに人を雇ったりする必要が生じるかもしれません。事業拡大のチャンスともいえますから、自社の方向性を考えて対応しましょう。

その他の例としては、ある企業から、日本のレップとして日本のバイヤーへのアプローチをして欲しいとか、日本に関する書籍の執筆をするので、リサーチの協力をして欲しいといったような依頼を受けたことがあります。こうした中から、新しい事業のシーズやビジネスチャンスが生まれてくることがあるでしょう。起業していなければ、なかったであろう可能性です。

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私が旅行会社を設立するまで

こう考えて、私は旅行会社を設立しました。実際の作業は、①法人設立→②個人事業主の業務を法人へ移管→③旅行業登録、の順番です。

①の法人設立自体は、今はとても簡単です。ただし、旅行業を行うには供託金が必要になりますので、法人設立の際には、その金額を考慮した資本金を用意しなくてはいけません。また、旅行業登録の場所はいろいろと制約があります(例えば、居住用のマンションの一室とかは難しい)ので、法人登記の段階で旅行業登録が可能な場所かどうかを確認しておきます。

②の個人事業主から法人への業務移管は、旅行業登録の前で大丈夫です。また、ガイド業務を移管せず、引き続き個人事業主として続けることもできます。私は決算をダブルでやるのが面倒だったので、全ての業務を法人に移管して、個人事業主登録を廃止しました。

③の旅行業登録には、旅行業務取扱管理者の資格者が必要です。この資格は、試験内容が通訳案内士とかぶる部分がかなりあるので、通訳案内士試験にパスしたら、時間を空けずに取得しておくと良いです。私はこの資格を取得していたので、自分一人で旅行業を開業することができました。もし資格を保有していなければ、誰か有資格者に依頼する必要があり、費用も発生するでしょう。

旅行会社の登録を業者に委託すると、結構な費用が掛かります。気を付けるべきポイントがいくつかありますが、自分で行うことも十分可能なので、時間がある方はご自身でやられることをお勧めします。その後の旅行会社の管理に役立つ知識も、身に付くと思います。

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まとめ

この記事の内容をまとめます。

  • 通訳案内士が業務拡大を目指す場合には、法人化したほうがよい
  • ビジネスリスク回避のほか、新規ビジネスのチャンスが広がる
  • 法人設立から旅行業登録までは、全て自分で行うことも十分可能

ということです。

通訳案内士をしていると、「ありふれた観光地ばかり案内するのは飽きた」とか、「自分だったら、あの場所をぜひ紹介したい」とか、考え始める時があると思います。それはすでに旅行業起業への第一歩と言えます。法律に触れるリスクを回避し、安心して堂々と事業を推進してください。

以下の私のnoteで、フリーランス通訳案内士のネットの活用法、自由な働きかたに関する思いなどを、語っています。もしよければ、覗いてみてください。