通訳案内士の収入は、高い?低い? 年収アップのための方法は?

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通訳案内士の収入は低いという話をよく聞きますが、実際はどうなのでしょうか?

じつは、通訳案内士の年収を、一般サラリーマンの年収と比較しても、あまり意味がありません。

なぜなら、通訳案内士は基本フリーランスであり、勤務形態や働き方が会社勤務の人とは全く異なるからです。

ここでは、通訳案内士の収入がどのようなものなのか、その中身をよく見て、収入アップの手段を考えていきます。

読み終えていただければ、通訳案内士の収入の意味を正しく理解でき、年収アップのための目指すべき方向が明らかになります。

通訳案内士の収入を、サラリーマンと比較するのは無意味

通訳案内士の収入は、一般より低いという話をよく目にしますが、これは本当でしょうか?例えば、厚生労働省の職業情報提供サイトJobtabに掲載されている、添乗員・観光案内人の令和4年の平均年収は、381.9万円です。

一方、国税庁の民間給与実態統計調査によりますと、令和4年に1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は、458万円となっています。

こうしたデータから、「通訳案内士の年収は一般会社員より低い」という人がいますが、こうした比較はほとんど意味がありません。

働き方が全く異なる通訳案内士と、一般の会社員とを、このように単純に年収で比較するというのは、多様性のある通訳案内士という職業を、規格の決まった会社員の物差しで測ろうというものです。間違った結論を導いてしまうでしょう。

通訳案内士はフリーランス。労働日数が少なく、時給は高く自由時間が多い

通訳案内士は、多くの場合フリーランスとして仕事をします。会社員のように、平日毎日9時から5時まで働く、というのではありません。お客さんがいるときに働き、その労働に対して報酬が支払われる仕事です。

サラリーマンでしたら、確実に所定の賃金を毎月得ることができますが、通訳案内士は仕事が無ければ収入がありません。逆に、サラリーマンはたとえ仕事が早く終わっても、平日の決まった時間は会社のために働かねばなりません(裁量労働制の場合を除く)が、通訳案内士は、仕事が無ければ、その時間は自由に使うことができます

先に、通訳案内士の平均年収が約382万円とお伝えしましたが、この数字は様々な働き方の人を含んでいます。通訳案内士を専業として自分の収入の柱とされている方、他の職業が主で副業として案内をされている方、普段は主婦をしているが時々パート的に通訳ガイドをされている方など、いろいろです。

通訳案内士の労働日数は、一般の会社員と比較して少ないです。やや古いデータですが、平成27年に観光庁が通訳案内士を対象に実施した就業実態調査の結果は、以下の通りでした。

年間就業日数 比率
0~30日 50.1%
31~100日 22.8%
101~200日 7.9%
201日以上  0.6%

一般のサラリーマンでしたら、年間200日以上は勤務するでしょう。通訳案内士の就業日数がいかに少ないかが、おわかりいただけると思います。

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通訳案内士の平均稼働日数は年間100日未満。時給は4-5千円

現在、年間平均総労働時間は1700時間程度ですから、一般サラリーマンの平均給与の458万円をこれで割ると、時給は2,700円くらいになります。

一方で、通訳案内士の時給はいくらぐらいでしょうか?案内士の最新の就業実態を示すデータはなかなか見つからないのですが、コロナ明けの2023年に、ある大手の通訳案内士団体が、所属メンバーを対象に調査を実施しました。

この団体は、積極的に業務をしているメンバーの方が多いことが業界では知られています。そのため、真剣に仕事に取り組んでいる方々の現状を知るのに最適です。それによると、2023年の春、3~5月の就業状況は、回答者の中間値で月平均10日程度(3か月で30日)でした。春は一番の観光シーズンであり、数字は大きめに出ますので、年間では80~90日程度の稼働日数が実情だと思います。

おそらく、多くの通訳案内士が兼業、またはアルバイトとしてガイド業務を行っているのではないでしょうか。専業のガイドの方は、平均値よりもかなり多くの日数を稼働していると思われます。

時給についてもデータがあり、半日(4時間)の報酬の中間値は18,000~20,000円、一日(8時間)の場合が30,000~35,000円という結果になっています。時給にすると、約3,750円~5,000円です。これは一般サラリーマンの2,700円よりもかなり高い水準ですね。

つまり、通訳案内士は会社員と違って毎日仕事がある訳ではなく、平均的には繁忙期で毎月10-15日、閑散期は毎月5日前後の稼働日数というのが普通。時給が比較的高いので、それでも年収にすると400万円近くになる、ということかもしれません。

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年収アップのための3つの道

こうして見てくると、通訳案内士が年収を上げる道は、3つあることがわかります。

  • 年間稼働日数を上げる
  • 時給を上げる
  • 空き時間を活用して新たな収入源を獲得する

年間稼働日数を増やし、年間200日働けば、年収が平均の倍ぐらいまで増やせます。200日は普通の会社員と同じくらいですから、不可能な話ではありません。ガイドの仕事は季節性があり、簡単に稼働日を増やせる訳ではありませんが、今はインバウンドが増えてガイドが不足している状況なので、稼働日数を増やしたい人にはチャンスです。

ただ、単純に働く日数を増やして収入を増やすというのは、そのぶん自分の時間が減りますし、過労につながりやすいです。もう一つの方法である、時給を上げることと組み合わせることが必要です。

とはいえ、仕事を人から与えてもらっている場合は、ガイド料は自分の自由にはなりませんから、時給を上げていくことは難しいです。この点でも、私がおすすめしている、自分のウェブサイトで集客するという方法が有利です。

自分で集客を行い、自分のサービスの価格は自分で決める。円安ドル高になったら、円建ての価格を少し上げてもドルで生活している訪日客には、大きなインパクトにはならないはず。そういった試行錯誤を実際にできるということが重要なのです。

そして、空いている時間を活用して、新たな収入の道を作り出すのも良い取り組みだと思います。サラリーマンの副業と一緒です。ガイドの仕事は不定期ですから、空き時間も不規則になります。したがって、この副業は日付や時間の縛りが少ないタイプの仕事が良いでしょう。

ネットビジネスなどは、自宅でできる仕事ですし、時間も場所も自由に取り組めるので、まさに向いていると思います。特に若い方はデジタルスキルがありますから、そういった方面で、副収入を得られる道を考えてみましょう。それが通訳案内士の仕事とシナジーが発生すれば最高ですね。

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まとめ

 それでは、記事の内容をまとめます。

  • 通訳案内士の年収を一般の会社員の年収を比較しても、意味がない
  • 通訳案内士は、フリーランス。実際に働いた日数分の収入になる
  • 平均的な通訳案内士は年間100日程度働き、年収は382万円
  • 年収アップには、稼働日数と時給アップの両方が必要。そのためには「自分で集客する」仕事の仕方が有利
  • 空き時間を利用してデジタルスキルを活かした新たな収入を得るのも戦略の一つ

ということです。

これまでは、ガイドの仕事は繁閑の差が大きく、稼働日が増やせないことが、通訳案内士の仕事で最も不利なことと言われてきました。ただ、それは安定したサラリーマン的な働き方を是とする考え方に基づいているように感じます。

今の時代、自分の得意を生かし、他の人とは違うスタイルを貫くこと、本当に自分が好きなことをすることが、幸福につながる時代です。空き時間が多いということは、その時間を生かすチャンスがあるということ。発想を切り替えて、他の人より本気で物事に取り組めば、きっと新たな道が開けてくると思います。ぜひチャレンジしてください。